今回のメルマガは「公正取引委員会」が2020年4月21日付で公開した「フィンテックを活用した金融サービスの向上に向けた競争政策上の課題について」についてです。
「かなり踏み込んできたな」と感じた部分がございますので、簡単な解説と、所感をお伝えいたします。
※今回は金融ネタということもあり、少し小難しいかもしれません。
できるだけ齟齬がないように、できるだけシンプルな内容にと心がけましたが、分かりにくい点がございましたらご指摘くださいませ。
「概要」の要約
「報告概要書」がよくまとまっているものの、それでも細かいので要約いたします。
(概要は上記URLからダウンロードすることができます。)
大きくは以下の2つについて語られております。
・家計簿サービス、会計サービス
・QRコード等を用いたキャッシュレス決済
どちらも「銀行(およびそれに付随するシステムベンダー)」に対して警告を出すという、既得権益に対してメスを入れるような内容になっております。
「取引上の地位が優越する銀行(およびそのサービスを抱えるシステムベンダー)が、新規参入者(家計簿やQRコードなどの決済サービスを提供する会社)に対して不当に不利益を与えている。これは独占禁止法上、問題となるおそれがある。」
、、、つまり、「金融系データの利用」「決済の実行」をするにあたり、
・他に選択できるサービスが(実質的に)ない
・利用料が高止まりしている
・交渉する余地もない(各種ヒヤリングより)
ので公正な状態ではないのではないか、と言っています。
「従量制料金は10年以上不変」など、かなり踏み込んで書かれております。
※多少意訳あり。
補足
金融サービスは、国の免許がないと参入できない事業です。(銀行法や資金決済法など)
銀行などからするとその分規制も強いのですが、逆に、規制で商売が守られているということでもあります。
「金融」という性質上、必要なことかとは思いますが、独占になりやすい性質を備えているとも言えます。
特に注目したポイント
独占禁止法に関連してくるお話ですので「優越的な立場を利用してますよね」みたいなお話は分かります。
今回、注目したポイントは「QRコード等を用いたキャッシュレス決済」の方のお話です。
日本の決済サービスとして「CAFIS(キャフィス)」というサービス(システム)があります。
「CAFIS」とは「決済利用者」と、「金融機関」や「クレジットカード会社」などをつなぐプラットフォームです。
例えば、○○Payにチャージするために、自分の銀行口座から○○Payに振替すると思いますが、この振替する処理に(ほぼ)使われるのが「CAFIS」というシステムなのです。
何に注目したかと言いますと、どちらかというと裏方のシステムベンダーである「NTTデータ」という社名を名指しで記載していることに驚きました。
(公正取引委員会の資料上に社名が明記されています。)
銀行などのプレイヤーではなく、システムを提供しているシステムベンダーを名指して出すというのはよっぽどな感があります。
しかし「手数料などの料金が下がらない」本質的な原因としては、的を射ていると考えます。
利益率を刺されるのは・・・
資料に「CAFISサービスの売上高営業利益率は10%台と高い傾向」と明記されております。
しかし「利益が高いと刺される」というのは少し怖いなと感じますね。
事実上独占しているから利益が出せるんだ、と言いたいのだとは思いますが。
「ITサービス」事業という観点だと、営業利益率が10%台というのは、特段高くないと感じます。
※ここで言う「ITサービス」は、プラットフォーム提供型のサービスの意味。
事業内容は少し異なりますが、facebookの営業利益率は約40%。googleの営業利益率は約20%。
LINEも約15%前後。
(近年のLINEは戦略的投資が激しすぎるため、2018年以前を参考。)
純粋に比較することはできませんが、バカみたいに高い利益率ではないと感じます。
これだと利益を出すのが「悪」のように感じてしまいます。
問題なのは「買い手(=サービス利用者)にあった料金となっていないこと」であり、「その点を改善しないといけない状況になかなかならないこと」だと考えます。
今後に期待
仮想通貨に対する法整備といい、フィンテックに向けた法整備といい、最近は「既得権益を守る」というよりは「競争力を保ち、海外に負けない」という意志を感じます。
(よい方向に向かっていると感じています。)
※仮想通貨については、日本の法整備は「早い」と言われております。(内容の良し悪しについてはここでは語りません。)
そういった中での、今回の公正取引委員会のメスの入れ方。
「このままでは海外に負けてしまう」という危機感の表れかもしれません。
利用者目線でいくと「どんどん便利になるのは歓迎!」ですね。
今後、日本の金融サービスがどのように進化していくのか、期待しましょう!
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