【メルマガ】東証システムトラブルに見る、考慮すべき点(2020年10月06日)

2020年10月1日、東京証券取引所のシステム障害により、終日売買停止となりました。
1999年5月にシステム化して以降、初の終日売買停止です。

私も前職では証券関連のシステムに関わっておりましたので、この事象は過去に記憶のない、大変大きな出来事だと感じました。
現場の方々はこの後も大変な苦労をされるかと思いますが、ぜひお願いしたいところであります。

もちろん、日本だけではなく世界に影響してしまう東証のシステムトラブル。
信用失墜、などの声も多々出ており、もちろんそれを否定するつもりはありません。

しかし、責めればよいだけのお話ではありません。
一般論的なお話は様々な記事がありますので、今回は少し違った観点から考察してみます。
考え方の1つ、としての内容である点、ご了承ください。

東証システム障害 記者会見の説明力

記者会見の後半について見る時間が取れましたので、私も見ていました。
ほぼQAの時間でしたが、回答についてはかなり質の高いものだと感じました。

おそらく、システムにあまり詳しくない人間が見ていると、よくわからなかったと思います。
しかし、システムを知っている人間からすると、あの場での受け答えはほぼ完璧であり、また、しっかりと理解をしてもらおうというスタンスが見えたと思います。

ここ最近、システムトラブルによる記者会見が増えております。

しかしほぼ全ての記者会見において、システムを自分事として話していない経営陣が多いと感じます。
まず理解していませんし、どこかに責任転嫁をするようなニュアンスが感じられます。

東証は完全にシステム商売である、と言う性質はあると思いますが、経営陣がしっかりと自分の言葉で話せていることには、少し感銘を受けました。
システム障害原因や対策についてこの時点ではっきりと言えない事は当然です。
しかしそれ以外に不明瞭な発言や、その場を乗り切るためのような発言はほとんどなかったのではないでしょうか。

記者の質問のレベルの低さ

逆にひどく目についたのは、質問のレベルの低さです。

正直同じことを聞いてばかりにすぎず、さすがに失礼だと感じるレベルでした。
そもそも質問をするご本人が、「既に説明いただいたかもしれませんが」枕詞をつけるのは一体何でしょうか。

「現時点での見解」「明日に向けて」「与えた影響に対する考え」などは良い質問だと思うのですが、システム障害について既に説明していることを何度も聞く意味がわかりません。
普通の会話としてもおかしいですよね。

「質問してこい」みたいな命令が出てるのかもしれませんが、記事にするために必要な情報があるのであれば、内容が書ける方から不足している情報が何かを確認して質問してほしいものです。

記者の方でもこのITレベルであるということが垣間見えて、日本のデジタル化が進まないのは一人一人に責任があると感じました。
「それ、私の担当ではないし。」と思われた方。
それが、現状このようになっている原因ですよね。

本当に「何が何でも止まらない」システムは必要か?

もちろん再発防止しないといけませんし、今回の教訓を得て対策をとっていく必要はあるでしょう。
故障した時に、より影響を極小化をしていく事を考える必要もあるでしょう。

記者会見の場でも少し話が出ていましたが、2018年の東証のシステムトラブルを受けて、関係者とのコミュニケーションやテストの強化がされた事は肌で感じたことであります。
(当時、東証に接続する側のシステムを担当する者として、現場におりましたので。)
重要な社会インフラであるということもあり、やるべき事はきちんとしていく文化だと思います。

しかし、例えばさらなる冗長化を組み込むといった、大型な設備投資が必要となる対策は考える必要があると思います。

何をどこまでやっても、物理的なハードウェアが存在する以上、故障は避けられません。
むしろ、数を増やせば増やすほど、障害発生確率は上がります。

少しのダウンを許容できないために、例えば、コストを10倍使う必要がある、とした場合、どう判断するべきでしょうか。
売買手数料が10倍になります、と言われて、それでもサービスダウンしないことを優先して支払いますでしょうか?

東証に限らず、いまや、ほぼ全ての業界でシステムに依存しており、業務が成り立たないことが多いと感じます。
システムがない前提のプランを考えてもよいのかもしれませんね。

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One more thing

東証に限らず、システムは停止します。

1年以上前の記事になりますが、iCloudで大規模なシステム障害が発生した時のお話です。
この前後でも、AWS、Google、Microsoftなどのクラウドサービスでもサービスの停止が発生しています。

もちろん各クラウドサービスでも冗長化はしているでしょう。
しかし、それでも現実的には、サービスダウンが発生するのです。

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